マウスの毛包再生をヒトの薄毛に利用できる?その問題点とは

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マウスやラットを使って、毛包の自己再生能力の研究が古くからされてきました。1960年代にはすでに研究が報告されていて、現在ではかなり進歩しています。しかしマウスではうまくいっても、ヒトへ適用できるかというとまた別の話。毛包再生を薄毛治療に使うためには、どのような課題があるのでしょうか。

マウスの毛包再生能力

1990年代以降、毛包の本体を形作るケラチノサイトと、毛を誘導する能力のある毛乳頭細胞、結合組織鞘の細胞、生まれたばかりのマウスの真皮細胞を混合し、免疫不全にしたマウスの体内に移植する研究が行われてきました。
細胞同士が相互に作用し、自然に毛包が作られることも報告されているようです。
これを受けてさまざまな方法が考案されましたが、基本的にはケラチノサイトと毛乳頭かそれに代わる細胞を組み合わせることで、毛包再生が可能になるようです。

毛包再生の確率を上げるには?

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これまでの研究で、ケラチノサイトと毛乳頭細胞の割合を検討するため多くの実験が行われてきました。
その結果、毛乳頭細胞など、同じ毛を誘導する細胞を単なる毛包の毛たちのサイトから採取したものと、バルジから採取した毛包ケラチノサイト幹細胞で比較すると、バルジ幹細胞の方が効率よく毛包再生されました。
また、同じ毛乳頭の細胞でも長期間培養したものより生きた毛包から分離した直後のものでは、採取直後のもののほうが再生能力が高いこともわかったようです。
このように日々の研究によっていろんなことがわかってきているのですね。

ヒトへの応用に必要なこと

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マウスの実験ではうまくいっても、ヒトに試してうまくいくとは限りません。培養したヒトのケラチノサイトと毛乳頭細胞を、免疫不全マウスに移植しても、毛包はほぼ再生されなかったようです。そこにはいくつもの越えなければいけない壁があるようです。それは、

・毛包の大きさがそもそも違う
・幹細胞を使わなかったからかも?
・ヒトの細胞をマウスに移植しても能力を発揮できない?

など、さまざまな疑問があります。
これをひとつずつ解決していくことで、ヒトの毛包再生が可能となり、薄毛治療にも役立つ将来が期待できるのですね。

マウスでは毛包再生が成功しても、ヒトの細胞を使った実験ではまだまだ課題が多いようですね。それでも日夜研究に励む人たちがいるおかげで、薄毛治療の未来にも明るい光が射しています。

※薄毛の科学 119-121

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