
哺乳類は身体中が毛で覆われているのに、人間は進化の過程で体毛が薄く軟毛化しました。だからヒトは服を着たり、空調を調節する技術を発展させてきたのですね。しかし、生まれたての赤ちゃんにも毛は生えています。その発生について考えてみましょう。
毛包は胎児の頃にできあがる?

赤ちゃんがお母さんのお腹の中で育つ時、受精卵から分裂をくり返していろいろな臓器などができていきます。毛の組織である毛包もそのひとつ。
妊娠9週頃には毛包の発生は頭の方からはじまり、徐々におしりの方へとできていきます。
やがて妊娠4〜6ヶ月になる頃には、ほぼ全身に毛包ができあがっているそうです。だから生まれたての赤ちゃんにもちゃんと毛が生えているのですね。
毛包発生はどんな風に起こっている?
お腹の中の赤ちゃんに毛包が発生するメカニズムはどうなっているのでしょうか?
まず「胎生表皮」という2層になった皮膚表面に、細胞が集まっていきます。表皮の下の「真皮」にも細胞が集まり、「原始毛芽」と呼ばれるものになります。
これが毛包発生の始まりです。
やがて「原始毛芽」は真皮にある間葉系細胞に誘導されるように伸びていき、「毛杭」と呼ばれるものになるのです。
毛包から毛が生えるまで

「毛杭」ができたら、下方が膨らんできます。これが「毛球」となり、その下の間葉系細胞を包み込んだ部分が「毛乳頭」となります。
妊娠3ヶ月頃には色素の元である「メラノサイト」のもとが表皮に移動してきます。これが毛球の上に来て、妊娠5ヶ月頃には胎児の毛が完成するのです。
この毛を「胎生毛」と言いますが、妊娠8ヶ月頃までに休止期に入ります。その後また成長期になって軟毛を作りますが、出生後数ヶ月以内に硬くて太い毛に変化するのです。
お母さんのお腹の中で、毛がすでに作られているなんて感動的ですよね。赤ちゃんの時の毛は二度と生えないので、大切に保管している人も多いようです。発生のメカニズムがわかることで、今後の薄毛治療にもいかされる日がくるかもしれません。
※薄毛の科学 P8-10
