発毛のしくみは、遺伝子と免疫系が握っている?

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毛髪の形成や薄毛に、遺伝子が関連していることは、一般の方でも何となく承知していることでしょう。遺伝子の役割を調べるには、突然変異や遺伝病を研究することが大変重要です。
今回は、その興味深い研究をご紹介しましょう。

毛のないヌードマウスの研究

関西医科大学の実験では、以下のようなことが行われました。

・ヌードマウス(T細胞というリンパ球がないマウス)に、
有毛マウスの骨髄細胞と胸腺組織を移植し、T細胞の再建をした。

・ヌードマウスに正常な毛が伸び始める

このことから、ヌードマウスの発毛異常に免疫細胞である「T細胞」が関係していると推測されます。しかし、そう単純な話でもないようなのです。T細胞だけでなく、別のB細胞というリンパ球すらないマウスが、普通のはつかねずみのように毛がフサフサあるのです。つまり、T細胞があるかどうかだけで発毛をコントロールしているのではなく、免疫系全体のバランスが、発毛に影響しているのではないかと考えられています。

免疫抑制剤で発毛する?

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発毛と免疫系の関係で、注目すべき現象があります。それは「免疫抑制剤」の副作用として、発毛の促進がみられるということです。

免疫抑制剤とは、臓器移植時の拒絶反応を抑える薬で、その名の通り免疫系の活動を抑制したり邪魔したりする作用があります。試しに、ネズミの皮膚に直接免疫抑制剤をかけると、なんと発毛が促進されたというから驚きです。

しかし、免疫抑制剤には強い副作用があるため、皮膚科医の指導の元でないと養毛剤として使うことは非常に難しいようです。けれども、発毛のメカニズムを解明するうえでは、重要な発見であり、今後の研究に期待がかかります。

発毛には、遺伝と免疫系が複雑にからんでいるのですね!そのメカニズムはまだまだすべて解明されてはいませんが、研究の進化が期待されるところです。
  

参考文献 毛髪を科学する 松崎 貴著

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