表皮細胞の分化を調整するケラチン

表皮細胞は上から角化細胞、顆粒細胞、基底細胞と順番に分化しています。細胞分裂が頻繁に行われても表皮が安定した組織構造を保てるのは、細胞の分裂速度分裂加速度落屑速度がうまく調和しているからです。

1x1.trans 表皮細胞の分化を調整するケラチン

表皮細胞は、お互いに接着しているのですが、その接着のキーポイントとなっているのが「ケラチン」です。

ケラチンにはたくさんの種類があり、毛以外の細胞にもあることがわかっています。毛にはヘアーケラチン。それ以外の細胞にはサイトケラチンと呼ばれています。

このサイトケラチン、実は20種類以上のタイプがあります。細胞の種類や分化状態に応じて異なったタイプのサイトケラチンが発現します。面白いですよね。その性質からサイトケラチンのタイプを持っているかで細胞の分化段階を知ることも出来ます。

細胞が基底膜に結合しているか?細胞に接しているのか?どんな細胞なのか?などの情報がさまざまな接触装置を使って、ケラチンに伝達されるのです。伝達されるとケラチンに連動しているたんぱく質群が活性化され、その信号は細胞の核に伝えられます。核に信号が送られると遺伝子の発現が変化をします。

ケラチンは情報伝達のスペシャリストになる傍ら、自らの発現も変化させていくのです。もしもこのケラチン遺伝子に異変が起こり、特殊なケラチンが作られると表皮が乾燥したり、魚鱗癬という病気になってしまうということも知られています。また、デスモソームやヘミデスモゾームも同様に構成成分の異常を起こすと、外部からの情報をうまく取り込めずバランスを崩してしまい病気になってしまいます。

表皮細胞は、ケラチンや接着装置を上手に使いながら、情報を確認し細胞分裂速度を強調させているのです。

参考文献 毛髪を科学する 松崎 貴著

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